映画

【現代版が描く闇】映画『レ・ミゼラブル』のあらすじと感想・考察

さて、今回は映画『レ・ミゼラブル』について書いていきます。

本作は現代社会が抱える闇を鮮明に映し出し、アカデミー賞国際長編映画賞・ゴールデングローブ賞外国語映画賞にノミネートされ、カンヌ国際映画祭では審査員賞を受賞しました。

本作は、ラジ・リ監督の初長編作品です。

パンダ
パンダ
怒涛の終盤とラストシーンの緊迫感が凄すぎました。

映画『レ・ミゼラブル』のあらすじ

小説『レ・ミゼラブル』の舞台は、今や犯罪地域と化している。

パリ郊外にあるモンフェルメイユ。そこは犯罪多発地区の一部とされ、権力に抑圧される弱者と居場所を失った人々が暮らしている。

そんな街で警官のステファンは犯罪防止班に新しく加わる。彼は仲間とパトロールをするうちに、アフリカ移民の2世・3世やイスラム教徒、麻薬グループ、サーカス団などが混在した緊張関係にあると知る。

そんなある日、少年イッサがサーカス団の子ライオンを盗み出してしまう。この些細な出来事は次第に大きな騒動となり、収拾がつかない事態へ発展してしまう。

遂に積もりまくった鬱憤が爆発し警察の歯も立たなくなった時、この街にはどんな結末が待ち受けるのか。

映画『レ・ミゼラブル』のキャスト・スタッフ

監督

監督は、ラジ・リ監督です。

2004年にドキュメンタリー『28 Millimeters』の脚本を担当し、以降『365 Days in Clichy-Montfermeil』や『365 Days In Mali』などドキュメンタリーを中心に監督しました。

2017年には初の短編映画『Les Misérables』を監督しセザール賞にノミネートされます。本作はその同名短編映画にインスパイアされ、今もモンフェルメイユで暮らす監督自身の実体験を基に製作された作品です。

キャスト

ステファンダミアン・ボナール
クリスアレクシス・マネンティ
グワダジェブリル・ゾンガ
市長スティーブ・ティアンチュー
イッサイッサ・ペリカ

ステファンを演じたダミアン・ボナールさんは『ダンケルク』などに出演する俳優で、クリスを演じたアレクシス・マネンティさんはアーティスト集団Kourtrajméのメンバーで本作では脚本にも関わっています。

そして、グワダを演じたジェブリル・ゾンガさんはモデルや俳優、ドキュメンタリーのプロデュースなど多岐に渡って活躍している人物です。

また、市長を演じたスティーブ・ティアンチューさんや子どもたちなどモンフェルメイユに住む近所の住人が多くキャスティングされています。

映画『レ・ミゼラブル』の感想

本作は名作の小説『レ・ミゼラブル』と同じタイトルを掲げながらも、全くタイトル負けしない衝撃的な作品です。

現代に存在するレ・ミゼラブル〈悲劇の人々〉が鮮烈に描かれています。

冒頭はサッカーワールドカップ優勝に沸くシーンで始まります。子ども達は、この試合で誰が点を決めヒーローになるのか賭け合う会話を繰り広げます。このシーンから、一人の英雄が集団に熱狂をもたらす様子が伝わります。

満面の笑みと歓喜に包まれるパリ中心部とは対照的なモンフェルメイユの悲劇へシーンが移っていくと、まさしく冒頭とは正反対の熱狂が生まれていきます。

この対比は非常に鮮やかでした。

街の秩序は非常に脆いバランスで保たれていて、かろうじて警察の力封じで維持されている世界です。警察が過ちを犯した瞬間にバランスは一気に崩れ、怒涛の勢いで加速していきます。脅威的な終盤です。

そして、このような危ういバランスで保たれている場所が世界の至る所にあるということを強く感じさせてくれます。もはや他人事とは言えない切迫感に包まれました。

また、警官達の家族が映されるシーンが非常に効果的でした。

警官達の穏やかな日常から、彼らもまた社会に鬱屈された立場であることが分かります。その時に、「友よ、よく覚えておけ、悪い草も人間もない、育てるものが悪いだけだ」という言葉が染みてきました。

ラジ・リ監督はモンフェルメイユの現状を三部作で描きたいと言っているので、次の作品も楽しみです。

【ネタバレ】映画『レ・ミゼラブル』の考察

衝撃のラストシーンの意味は?

火炎瓶を構えるイッサと、銃を向けるステファンという衝撃的なラストシーンで映画は終わります。

この後、イッサは火炎瓶を投げたのか、様々な予想が出来ると思います。ステファンはイッサを負傷させた警察の一員でありながら、イッサを救い出した人物でもあります。

私は火炎瓶を投げないと読み取りました。

火炎瓶を投げればその場にいる警官達を苦しめ、気持ちを晴らすことが出来るかも知れません。しかし、ゴム弾を受けたイッサが報復として暴動を起こした様に、警察がさらなる抑え込みをしてくるでしょう。

この暴力による報復合戦は悪循環に陥り、結局は自分自身を苦しめることになるのです。

あの状況で興奮するイッサがそこまで頭を働かせることができたのかは疑問ですが、銃口を自分に向けるステファンを見て、そんなことを感じ取る可能性もあると思います。

また、部屋の中から眺めていた少年が扉を開ける展開も個人的にはアリだと思います。そうすると、普段遠い所から傍観しかしていない人が積極的に関わっていくべきだというメッセージになるでしょう。

どんなラストにせよ、この社会が抱える闇の複雑さを鮮やかに提示した最高のシーンでした。

さいごに

今回は映画『レ・ミゼラブル』について書きました。

ラジ・リ監督初長編作品にして、映画『パラサイト』ともカンヌで競った現代社会の闇を鮮明に描く傑作です。

気になる方は、ぜひご覧ください!