さて、今回は映画『無垢なる証人』について書いていきます。
第5回ロッテシナリオ公募展で大賞を獲得したシナリオを、イ・ハン監督がメガホンを取り映画化されました。
殺人容疑者の弁護士と唯一の目撃者である自閉症の少女の交流を描いた作品です。
映画『無垢なる証人』のあらすじ
証人は自閉症の女の子
弁護士スノは、自身の出世がかかった殺人事件の弁護士に指名される。
容疑者の無罪を立証すべく、唯一の目撃者である自閉症の少女ジウを証人に立たせようとする。しかしジウは意思疎通が難しい。
スノはジウのもとを訪れるが、まともにあいさつもできない。スノは少しずつジウへの理解を示し心を通わせようと努力する。
しかし、2人は法廷で弁護士と検察側の証人として向き合うことになってしまう。
果たして、2人は本当の意味で心を通わせることができるのか。そして、事件の真相は何なのか。
映画『無垢なる証人』のキャスト・スタッフ
監督
監督は、イ・ハン監督です。
2002年、『永遠の片思い』で監督デビューしました。代表作として2011年『ワンドゥギ』や2015年『戦場のメロディ』などがあります。
キャスト
スノ | チョン・ウソン |
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ジウ | キム・ヒャンギ |
チョン・ウソンさんは、1994年に映画『クミホ(九尾狐)』のオーディションに合格し俳優デビュー。映画『私の頭の中の消しゴム』などに出演しています。
キム・ヒャンギさんは2006年映画『マウミ』で子役デビューし、『神と共に』シリーズなどに出演しています。
【ネタバレあり】映画『無垢なる証人』の感想
ジウは弁護側の証人に立つのだと思っていましたが、検察側の証人だったとは。そのことが判明した瞬間から、この映画は只者ではない感が漂い始めました。
弁護士のスノは、父が友達の保証人になったばかりに借金を背負わされます。それが原因となり、結婚を諦めたり自分の信念よりも給料を重視するようになってしまいます。
そんなスノは、いい人でありたいと信念を貫くジウとの交流を通して変わっていきます。
「あなたは、いい人ですか?」
という質問に「はい」と自信を持って答えられるでしょうか。いい人であるのは非常に覚悟のいることだと改めて感じました。
スノに借金を背負わせた父も友達を助けるために保証人になったある種の「いい人」です。けれど、いい人は時に損害を押し付けられてしまいます。自分の正義を振り返りました。
スノがいい人であるギウと父を通して自らの信念を思い出していく過程はシンプルながら、印象的なセリフと相まって感動的でした。
特に、スノの「自閉症さえなかったら」という呟きに「自閉症じゃなかったらジウではありません」と返す母や、ジウが支援学校を「普通のふりをしなくて良いから楽しい」と言うシーンは障害の正体が何かを強く印象付けられたセリフです。
そして最後にジウが「スノさんはいい人です」と答え合わせするシーンが完璧な締めでした。
映画『無垢なる証人』の考察
「障害」の正体
この映画を通して感じたことは「障害は社会の問題」だと言うことです。
人間には誰しも得意なことと苦手なことがあるでしょう。しかし、特定の病気を患った人にだけ障がい者のラベルを貼り分類されてしまいます。
健常者が障がい者とされないのは、苦手なことを社会がカバーできているからではないでしょうか。一方で障がい者は健常者用に構築された社会システムにあわせることを求められます。
障害という概念が生まれる背景には、障がい者の生得的なものではなく社会の不備があると感じました。
だからこそ、苦しい時に素直に助けをお願いし、逆に助けを求めている人に手を差し伸べる、そんな「いい人」でありたいと思わせてくれる作品でした。
さいごに
近年、韓国映画の躍進が凄まじいですが本作も非常に良い作品でした。
ストーリー展開と魅力的なセリフの数々に胸を締め付けられました。
気になる方はぜひご覧ください!